AKB商法は本当に音楽業界を「壊した」のか?

コラム
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ほんとにそうか?

YouTube80年代90年代の音楽関連の動画を見てるとこういったコメントがよく目に入る。

                      

  • AKBの握手券商法のせいで音楽業界は完全に死んだ
  • ジャニーズのせいで…
  • LDHのせいで…

                      

果たして本当にそうなのだろうか?

邦楽は”終わってる”?

そもそも何をもって音楽業界を終わったとみなすのか?

                  

ある人はこう言う。

「邦楽は2010年代に終わった。アイドルしかいない。」

また、ある人はこう言う。

「邦楽は00年代に終わった。オレンジレンジとかGreeeenみたいなのしかいない時点で終わってる。」

さらに、ある人はこう言う。

「邦楽は90年代に終わってた。小室ファミリーとかビーイングみたいな量産型やV系みたいなナヨナヨばっか。」

                    

つまり何をもって終わったと感じるかは人それぞれなのである。

ただ、私の体感では、①>>>>②>>③の順に意見が多いように感じる。

では「終わった」を細分化してみていきたいと思う。

a.歌詞が糞化して終わった

個人的にはこの定義で行くと邦楽は小室ファミリー、ビーイング系(B’z、大黒摩季除く)によって90年代に終わり始めて00年代で完全に死んだと思われる。

その辺のヒットにより「別に詩的・個性的な歌詞じゃなくてもストレートな応援・恋愛ソングでも売れるじゃん。なら安っぽい歌詞だろうが本人に書かせた方が安上がりだしカリスマ性上がるじゃん」(小室哲哉の場合はそれに加えて印税も)となり、たいした歌詞を書けない人たちが自分で書く(書かせられる)ようになったのもこのころ。

逆に歌詞の最盛期だったのは70年代~80年代か。90年代も小沢健二とかイエモン、スピッツ、ミスチルみたいに神がかりな歌詞を書く若手歌手がいたけど00年代以降はそういう新人はチャートから姿を消したね。

b.曲が糞化して終わった

この意見はあまり見ない。曲のクオリティは上がっていく一方であるが、個人的にはああいうEDM的な曲がなぁ…(笑)

ただ日本人好みのキャッチーな曲をかけるバンドマンが減って…というのはその通りだと思う。「そもそもそういうのが好きじゃないから書かないし、書こうと思っても書けない」という人が大半。

c.実力が糞化して終わった

これはaとのハイブリッドでよく見る意見。主に口パクアイドルや、ジャニーズの歌唱力、ダンスをDA PUMP、MAXをはじめとした沖縄アクターズスクール勢と比較した場合に言われる。

d.自作自演しない(自分で歌詞、曲を書かない)

これを言う人がたまにいるが、そもそも自作自演してても大したものを作ってない人の方が多い。特に作詞。

できない人が作詞・作曲のクレジットを無理に埋める必要はないのだ。

90年代以降それが一般化したことによって職業作詞家って言う概念がアニソン界隈以外では死につつあるしな。ちょっと勉強すれば(いや、しなくてもか)誰でも書けるような歌詞を書いてる人ばっか(笑)

e.ヒットチャートが終わった

多分これがダントツで多い意見。そもそもヒットチャートにアイドルソング以外が出なくなったから音楽が終わったというのが謎なのだが。別にヒットチャートに乗らなくてもいい音楽やってる人はいっぱいいるでしょ(笑)

まあチャートに多様性がないという話なのだろうが、そもそも70年代以降、日本のヒットチャートに現れる曲というのは基本的に

  1. 元から有名な人が出した曲
  2. ドラマ、CMがヒットした曲
  3. 歌謡曲ベースのキャッチーな曲

このどれかにほぼ必ず当てはまる。

その点において、00年代以降のバンド音楽はヒットチャートを意識してない音の人の方が覇権を取ってるんじゃないだろうか。アジカンとか。

それにキャッチー系のバンドって90年代以降ほぼ進歩してないしな。歌詞の質は著しく劣化する一方。そら廃れるわな。まあミクスチャーみたいなのも一瞬流行ったけど。あっ、でも最近King gnuが出てきた。

というか2019年にCDの売り上げで物事を語るのがナンセンスだと思うのだが(笑)サブスクやYoutubeはだいぶ浸透してきたわけで。

そもそもなぜヒットチャートがアイドルまみれになったのか

まずは1992年の年間ヒットチャート50曲を分析。集計方法により、必ずしも合計は50にならないのでご注意を。

ここで言う若手とは

  • 最初のスマッシュヒット作品から5年以内
  • 大ヒット曲をそれまで一度も出していない

のいずれかを満たしているグループを指す。

1992年のトップ50

ジャンル
アイドル(中山美穂のみ)2
ダンスグループ1
バンド(うち若手2曲)9
ビーイング9
ソロシンガー18
芸人・子供向け・企画もの2
音楽グループ、ユニット8

つづいて1999年

ジャンル
アイドル9
ダンスグループ2
バンド(うち若手11曲)16
ビーイング(B’z)1
小室ファミリー6
ソロシンガー11
芸人・子供向け・企画もの4
音楽グループ、ユニット3

無所属…坂本龍一のenergy flow

邦楽クソ化の転換期との声が多い2005年

ジャンル
アイドル9
ダンスグループ2
バンド(若手はオレンジレンジ5、他2バンド各1) 13
ビーイング(B’z)2
ソロシンガー16
芸人・子供向け・企画もの3
音楽グループ、ユニット5

2008年

ジャンル
アイドル20
ダンスグループ3
バンド(若手はuverworld、ホルモンが各1曲)8
ビーイング(B’z)1
ソロシンガー11
芸人・子供向け・企画もの(ヘキサゴンファミリー3、ポニョ1)4
音楽グループ、ユニット3

2014年

ジャンル
アイドル41
ダンスグループ5
バンド(ミスチルのみ)1
ビーイング0
小室ファミリー0
ソロシンガー0
芸人・子供向け・企画もの(ゲラゲラポー)1
音楽グループ、ユニット2

これはワロタ。90%をアイドルとザイルが占めている。

ではこの年のTOP100からアイドル、ザイル系を抜いてみよう。

                        

**36位 : *18.1万枚 … ゴールデンボンバー 「101回目の呪い」
**44位 : *14.7万枚 … Mr.Children 「足音 ~Be Strong」
**48位 : *14.0万枚 … 東方神起 「Sweat/Answer」
**49位 : *14.0万枚 … SEKAI NO OWARI 「スノーマジックファンタジー」
**50位 : *13.6万枚 … キング・クリームソーダ 「ゲラゲラポーのうた」
**51位 : *13.4万枚 … サザンオールスターズ 「東京VICTORY」
**56位 : *11.9万枚 … 東方神起 「Hide & Seek/Something」
**57位 : *11.9万枚 … SEKAI NO OWARI 「Dragon Night」
**58位 : *11.5万枚 … 福田こうへい 「南部蝉しぐれ」
**59位 : *11.5万枚 … 東方神起 「Time Works Wonders」
**60位 : *11.2万枚 … SEKAI NO OWARI 「炎と森のカーニバル」
**61位 : *11.1万枚 … 2PM 「ミダレテミナ」

**63位 : *10.4万枚 … 福田こうへい 「峠越え」
**68位 : **9.2万枚 … 氷川きよし 「大利根ながれ月」
**69位 : **8.9万枚 … キング・クリームソーダ 「祭り囃子でゲラゲラポー/初恋峠でゲラゲラポー」
**70位 : **8.8万枚 … Perfume 「Cling Cling」
**71位 : **8.7万枚 … Dream5+ブリー隊長 「ダン・ダン ドゥビ・ズバー!」
**68位 : **9.2万枚 … 氷川きよし 「大利根ながれ月」
**69位 : **8.9万枚 … キング・クリームソーダ 「祭り囃子でゲラゲラポー/初恋峠でゲラゲラポー」
**70位 : **8.8万枚 … Perfume 「Cling Cling」
**71位 : **8.7万枚 … Dream5+ブリー隊長 「ダン・ダン ドゥビ・ズバー!」
**80位 : **7.4万枚 … Acid Black Cherry 「君がいない、あの日から…」
**84位 : **7.1万枚 … UVERworld 「ナノ・セカンド」
**85位 : **7.0万枚 … ゴールデンボンバー 「ローラの傷だらけ」
**90位 : **6.7万枚 … 安室奈美恵 「TSUKI」
**91位 : **6.7万枚 … 水森かおり 「島根恋旅」
**96位 : **6.4万枚 … 島倉千代子 「からたちの小径」

                           

いや、十分ひどいな。やっぱアイドル関係なしにそもそも終わってるやん(笑)

私は当時高校生だったけど、当時聞いたことあったのは44位のミスチル、50位の妖怪ウォッチ、51位のサザン、85位のローラの傷だらけの4つだけだった。アイドルとLDHを入れたら8曲。

バンドはなぜ売れなくなったのか

これは明白である。

  • 単純に有能なバンドマンが歌謡ベースの曲、大衆的な売り方、もしくはその両方を好まなくなったから。
  • そしてそれに影響を受けた世代がそのスタイルを受け継いだから。
  • その結果、バンド界隈のテレビ露出が減り一般層を引き込めなくなる。
  • よってCDが売れなくなる。チャートからバンドが減少。
  • いわゆる青春パンクのような例外もいたが、一部を除き一瞬で廃れた。
  • 大衆的バンドもいるが大して人を引き付ける要素も音楽性の進歩もない。歌詞も凡庸。
  • 2010年代のバンド界ではフェス系の曲調の曲が流行る(フルドライブ、オドループetc)。もちろん一般層は引き込めないので上記の現状が続いていた。

つまりアイドルは関係ないといえる。

でも…

でも考えてみてほしい。果たして以上の経緯は「バンド界隈が終わった」といえるのだろうか?

単にCD売り上げとテレビ露出が減っただけではないのか?

別に表に出なくなっただけでいい曲をやっているバンドやシンガーはいっぱいいるではないか。

個人的には90年代のバンドに比べるとレベルは大幅に下がっているのは正直否めないが、だからと言ってバンド界隈が終わったとはとても言えないのである。

圧力・忖度とは…

レコタイも糞になってるが、これもAKBやEXILEの登場より全然前から色々黒い噂があるみたいだしな~

あとジャニーズの圧力については…コメントは控えさせていただきます(笑)

握手券商法の是非

個人的には賛成である。上でも書いたがもはやCDの売り上げ枚数で音楽を語る時代ではないのだ。

それにレコード会社が潤えばメジャーアーティストの新人発掘育成給料にかけられる費用も増えてくる。

念のため言っとくが私はAKB系のCDは1枚も買ったことはないですよ(笑)

それに握手券商法とまでは行かずとも、現在なら米津玄師も最新シングル『馬と鹿』にはライブの先行抽選券特製ラバーバンドを付けたりしているし、古くはB’zやサザンもべスト盤を出しまくっている。

ちなみにこの3つはサブスクにも出していない。みんなどうにかしてCDを売りたいのだ。

【まとめ】音楽業界が「終わった」と言われてしまうメカニズム

2002年ごろ

バンド業界全体が一般ウケする音楽(GLAY、WANDSみたいなの)を好まなくなる

と同時にバンプ、アジカンあたりの大物若手が「ダサいからTV出ねえわ、芸人にイジられるし生演奏できんし」をやり出す

みんな真似する(ただしオレンジレンジ、レミオロメンのような例外も少数)

音楽番組がアイドルだらけになる

                             

2000年代後半

その余波でHey Hey Heyやうたばん、ポップジャムが終わる

                    

2010年代前半

コブクロ、いきものがかりが徐々に落ち着く その後釜もおらず音楽番組はアイドル、EXILE祭りに

バンプのフォロワーで大物若手のRAD、そしてワンオクが相変わらず「TV出ない」をやり続ける

バンド業界ではフェス系の曲(一般ウケしない、カラオケ向きでない)が流行り始め、さらに一般社会とは隔絶されたものに (Backnumberのような例外も)

バンド冬の時代(のように見えているが単に世間では流行ってないだけでバンドは沢山いるしフェスも大盛況)

                           

要はバンド界隈が売り上げ的に下がってきたところに秋元康が入り込んでいっただけなのだ。

ヒットチャートがおかしくなっただけで音楽界そのものをおかしくしたわけではない。

そもそもAKBが握手券商法を始めたころは既にDL販売、違法ストリーミングの普及とともにCD売上チャートが意味を為さなくなっていたころだったしね。

現在の邦楽界

その反動からか、最近は普通にKing gnuヒゲダンがバンバンテレビに出てる。それとYoutubeで音楽を聴く、というのが一般的になったためあまりテレビに出るのとそうでないのとで差がなくなってきた。

ちょっとアイドルが下火になりつつあるのは個人的には困るのだけど(笑)


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